愛を絞って

深夜3時半を過ぎた1DKにて
ギターソロはいよいよ意気を高め
最高潮を迎えようとする
薬指ここぞとばかりにチョーキングかませば
瞬間、1弦あえなくはち切れる
僕は放心状態になる

思えば前触ればかりだった気がする
「出て行こうと思う」って
君が毅然と口にした時
驚きよりも納得の気持ちだった

出て行ってしまうこと
実感なんて全然湧かなかった
荷物を整理しながら
いつも通りの冗談飛ばしていた

君が詰め替えていったシャンプーを
後生大事に使う
水を足して薄め続けたら
きっと僕の涙と同じ成分

残せるだけの愛を残して
どんな気持ちで愛を絞っていたの
最後まで優しかった君
心置きなく出て行けたかい

何も言わなくても継ぎ足されてく愛情を
食べて生きていた
きちんとしてる君に
認められてる自分を
高く見積もってた

君はいつしか結婚願望をなくしていて
僕はそれに甘んじていた
保留、後ろ倒し続き
今思うとそんな僕の不甲斐なさが
君から沢山の願望を奪っていたんだな

おさがりの赤のカーテン
秋の風が揺らしている
これは残して行くんだなとか
今なお新たな一面見つけてる

本当に終わってしまったこと
実感なんて全然湧かないよ
荷物を整理しながら
いつも通りの冗談飛ばしていた
忘れるには
乗り越えてきたことが
余りに多すぎやしないか
だけど新たな生活へ踏み出す
君の邪魔だけはしないようにするよ

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